団体信用生命保険とは?注意点など解説|資金計画・住宅ローン
今回は、住宅ローンの団体信用生命保険について解説します。
1-1.団体信用生命保険とは
住宅ローンを組んでお家を建てる多くの場合、団体信用生命保険という保険に加入します。団体信用生命保険とは、住宅ローンの返済中に債務者(住宅ローンを組んでいる人)が死亡したり高度障害状態になったりしたときに降りる保険金で住宅ローンが完済される保険のことをいいます。
マイホーム購入後、債務者に万が一何かあっても家族に「衣食住」の「住」は残してあげられるという点で、団体信用生命保険は大きな役割を果たします。また、賃貸との大きな違いもこの点です。賃貸は例えば家計の大半を賄う旦那様が亡くなれば、残された家族で家賃を始めとするすべての生活費を払い続けなければなりません。
しかし、持ち家であれば同じ状況であっても住居費の支払いは心配せずに暮らしていけます。「住」という大きな財産を残しておけるというのは、家族としても大きな安心ですよね。
1-2.生命保険との違い
住宅ローンの団体信用生命保険と、一般的な生命保険との違いは以下の通りです。
①保険料
一般的な生命保険の場合、保険料が発生します。しかし、団体信用生命保険の場合保険料は住宅ローンの金利に含まれていることがほとんどです。また、一般的な生命保険は性別や年齢、死亡率などに基づいて保険料が算出されますが、団体信用生命保険は違います。団体信用生命保険は年齢や性別によって保険料が算出されることはありません。しかし、保障内容に追加オプションを加えると金利が上がったり、年齢によって追加できないオプションがあったりなどはあります。
②保険金の受取人
一般的な生命保険の保険金の受取人は、保険契約者が法定相続人を指名します。一方で団体信用生命保険の保険金の受取人は住宅ローンを組んだ金融機関です。金融機関は、受け取った保険金で住宅ローンの残債を完済します。よって、債務者の家族がその後の住宅ローンの支払いをする必要はなくなるということです。
③保障期間
一般的な生命保険は、契約時に保障期間を決定します。終身保険なら一生涯、定期保険なら決められた期間で保険は終了します。一方団体信用生命保険は、住宅ローンの返済期間が保険の保障期間となります。住宅ローンの返済が終了すれば、団体信用生命保険の保障期間も終了します。
1-3.団体信用生命保険の種類
団体信用生命保険の大まかな種類としては3つあります。それぞれ保障内容と金利が異なるため、しっかりと内容を理解し精査することが大切です。
①通常の団体信用生命保険
ローン契約者(被保険者)が死亡もしくは高度障害状態となったとき、ローン残債は保険金によって完済されます。これが通常の団体信用生命保険の内容です。高度障害というのは、両目の視力を永久に失ったり、手や脚を失ったりするなど身体機能が重度に低下している状態のことをいいます。通常の団体信用生命保険は、金融機関が審査を経て提示した金利で加入することになります。団体信用生命保険料として別途支払いがあるわけではありません。
②三大疾病特約付き団体信用生命保険
通常の団体信用生命保険が下りる「死亡もしくは高度障害状態」に加え、【がん】【急性心筋梗塞】【脳卒中】の三大疾病によって所定の状態となったときでも保険金が下りるというオプションを付けることができます。保険金が下りる条件は金融機関によって異なり、三大疾病に罹患しただけで下りる金融機関や下りない金融機関があります。こちらはオプションという形になるので、提示された金利に0.2%程度上乗せする必要があります(上乗せする金利は金融機関によって異なります)。また、この特約は、金融機関によってはローン契約者の年齢などによってオプションをつけることができない場合もあります。
③八大疾病特約付き団体信用生命保険
八大疾病特約付き団体信用生命保険は、①通常の団体信用生命保険と②三大疾病特約付き団体信用生命保険に加え、【高血圧症】【糖尿病】【慢性腎不全】【肝硬変】【慢性膵炎】の5つの重度慢性疾患によって所定の状態となったときでも保険金が下ります。こちらの場合も金利に0.3%程度上乗せすることでオプションをつけることができます。また、金融機関によって該当する疾患の状態や金利が異なりますのでご注意ください。
2. 団体信用生命保険加入の条件
2-1.団体信用生命保険加入には審査が必要
団体信用生命保険に加入するには審査が必要です。金融機関としても、病気などで保険が下りる可能性が高いと分かっている人を受け入れるのは難しく、審査によっては団体信用生命保険に加入できず希望の金融機関で住宅ローンを組むことができない可能性もあるのです。審査が心配な方は、はじめに団体信用生命保険の審査を受けることも可能です。
2-2.告知義務とは
その審査時に現在の健康状態や病歴、手術歴、投薬状況などを記載しなければなりません。これを告知義務といいます。告知日より3か月以内の治療や投薬、手術などがあるか?や現在の身体障害の状態などを告知しなければなりません。告知したからといって、必ず審査に落ちるわけではありません。
また、告知義務は「事実」を記載しなければなりません。わざと告知しなかったり、ウソの告知をした場合は告知義務違反となります。告知義務違反と認定されれば団体信用生命保険やそのオプションを解除され、いざ保険金が必要になったときでも保険金を受け取ることができなくなります。必ずありのままを告知するようにしましょう。
3. 団体信用生命保険の注意点
3-1.団体信用生命保険の審査に落ちたら
審査の結果、団体信用生命保険に加入できない場合もあります。そういった場合でも対処法があるので安心してください。以下で説明していきます。
①団体信用生命のない住宅ローンを利用する
住宅金融支援機構と民間金融機関が連携しているフラット35は、団体信用生命保険の加入が任意となっています。ローン契約者に万が一のことがあってもローンは残る点に注意が必要ですが、団体信用生命保険に通らないと住宅ローンが組めない方にオススメです。
②ワイド団信に加入する
ワイド団信とは、高血圧症や糖尿病、うつ病などの持病があっても入りやすい団体信用生命保険です。加入するのに金利が上乗せさせるという点に注意が必要ですが、持病があっても加入できる可能性が高いので一度審査してみましょう。
③配偶者が住宅ローンを組む
例えばご主人に病歴や投薬があり、団体信用生命保険に加入できなかったとします。その場合奥様名義で住宅ローンが組めるかどうか検討するという方法です。年収などがご主人と違う場合、借入可能額や条件を変わるのでお家探しも一から考える必要があります。団体信用生命保険に不安があるなら、土地探しやお家探しより先に団体信用生命保険の審査や住宅ローンの事前審査をしておくと安心ですね。
3-2.夫婦で住宅ローンを組む場合
共働き夫婦で住宅ローンを2人で組むケースも増えています。その場合、団体信用生命保険もそれぞれ対応が異なりますので注意が必要です。
①ペアローン
ペアローンは、2人でそれぞれ住宅ローンを組むローンです。例えば夫婦それぞれが2000万ずつ借入れ、合計4000万のお家を建てる、といった具合です。それぞれが住宅ローンを組むことになるので、2人とも団体信用生命保険に加入することになります。また、どちらか一方が死亡もしくは高度障害状態となったときはその人分の残債が、下りる保険金で完済されます。しかし、残された家族の住宅ローンは消えないので、そのまま返済し続けなければなりません。
②連帯債務
連帯債務は2人で同じ住宅ローンを借入れます。しかし、連帯債務者が団体信用生命保険に加入できるかどうかは金融機関や住宅ローン商品によって異なりますので、連帯債務でお考えの場合は団体信用生命保険についてもしっかりと検討しておく必要があります。
③連帯保証
連帯保証は、主債務者が返済できなくなったときに返済義務を負う借り方です。直接住宅ローンを組んでいるわけではないので、連帯保証人は団体信用生命保険に加入することはありません。
4.まとめ
・住宅ローンを組む場合は団体信用生命保険に加入しなければならない!
・団体信用生命保険には審査・告知義務があり、ウソの告知は絶対にダメ!
・住宅ローンの組み方で団体信用生命保険の対応も変わるので、返し方や金利だけでなく、団体信用生命保険についてもしっかりと検討が必要!